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有能な執事:制御性T細胞

免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか (ブルーバックス 2109) 新書 – 2020/10/22
坂口 志文 (著), 塚﨑 朝子 (著)

2025年のノーベル生理学・医学賞を受賞したテーマ=制御性T細胞(Treg:ティーレグ)をその発見者である坂口志文教授自らが解説した一冊。坂口さんの自伝とその発見に至った経緯、そして制御性T細胞の役割や特徴などが学べます。「免疫が強ければ強いほど健康」という世間の誤解を解き、免疫とは、異物を排除するだけでなく、いかに自分を攻撃しないか(自己寛容)のバランスの上に成り立っている」という本質をやや専門的な知識とともに教えてくれる内容です。以下↓がポイントですがこの役割をさらにわかりやすく教えてくれるのは漫画「はたらく細胞」です。『はたらく細胞』での制御性T細胞は、「クールで有能な女性秘書・執事」のような姿で描かれていて暴走しがちな他の免疫細胞たちとは一線を画す、知的な司令塔といった立ち位置。またヘルパーT細胞の秘書のような役割も果たしており、戦況を分析して「これ以上の攻撃は体に害を及ぼす」と判断した際にブレーキをかける役割を果たしています。ただその制御性T細胞も完ぺきではないのを示してくれるのが「がん細胞を助けてしまう」というエピソード。 免疫細胞たちが「がん細胞」を攻撃しようとした際、制御性T細胞は「(がん細胞も元々は自分の細胞であるため)過剰な攻撃はルール違反である」と判断し、なんとがん細胞を守るために味方のキラーT細胞を制止してしまいます。もともと自分自身の細胞が暴走してしまうがんの治療の難しさをわかりやすく示してくれる内容になっているかと思います。全体を通しては坂口さんの粘り勝ちの姿勢に感服を覚えました。どれだけ形勢不利になっても最後まであきらめずに研究を続け信念を貫き真理を勝ち取った姿。まさにGrit=やりぬく力だと感じます。 ↓そのほかまとめ

①「免疫の暴走」を抑止するブレーキ:役従来の免疫学では、ウイルスなどの外敵を攻撃する「アクセル」の研究が中心でした。しかし、アクセル全開のままだと、免疫は自分自身の体(自己)まで攻撃してしまいます。制御性T細胞の役割: 免疫系の中に、他の免疫細胞の働きを抑える「ブレーキ」専用の細胞が存在することを坂口教授が突き止めました。「自己」を守る: この細胞が正常に働くことで、自己免疫疾患(リウマチや1型糖尿病など)を防いでいます。

②発見までの苦難の道のり:本書の大きな見どころは、科学的発見の裏側にあるドラマです。1970年代、免疫を抑える細胞の存在(サプレッサーT細胞)は一度提唱されましたが、実体が掴めず、当時の学会からは「幽霊のような存在」として否定されてしまいました。逆風の中での証明: 坂口教授は粘り強く研究を続け、1995年に「CD25」というマーカーを特定。ついにその実在を証明し、世界を驚かせました。

③ 現代病と制御性T細胞の関係:私たちの体が抱える多くの疾患に、この細胞が深く関わっていることが解説されています。状態制御性T細胞の動き起こる現象少なすぎるブレーキが効かない花粉症、アトピー、自己免疫疾患多すぎる免疫を抑えすぎるがん細胞が免疫の攻撃を逃れて増殖する特に「がん」においては、がん細胞が制御性T細胞を味方につけてバリアを張ってしまうため、このブレーキを適度に外す治療法(免疫チェックポイント阻害薬など)が注目されています。

④医療の未来を変える可能性:本書の後半では、制御性T細胞をコントロールすることで実現する未来の医療が語られます。臓器移植: 移植した臓器を「敵」とみなさないよう、制御性T細胞を増やして拒絶反応を抑える。難病治療: 免疫のバランスを根本から整えることで、これまでの対症療法ではない治療を目指す。

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仕事は半導体デバイス開発。 趣味としているEnduranceスポーツと 日常の出来事を綴ります。

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