報酬に紐づけられた記憶に対してその報酬が変わってきたり再度、報酬の位置づけがなされたときにどのように記憶の重要性が変わって来るかをショウジョウバエを使って研究した論文です。一旦行動レベルでは記憶が失われたように見えても発現する環境が変わってくるとその記憶が再度評価され、よみがえることが分かってきました。つまりは記憶は忘却されるというよりは単に重みの変更が脳の中で処理されているといえそうです昔取った杵柄というのは確かにあるようでコネクティング・ドットが想起されますが昔の記憶が環境を変えていかされるということがあるということ。 一見、意味がないように感じても経験はどこで自分を助けてくれているかわからない。 そんな数奇な記憶の一端が明らかにされた内容だと感じます。そのほかのまとめは以下↓ ここら辺、医療の一環でトラウマとなってしているもの、依存症にかかわる記憶を逆に取り除くということにも活用できるのかもしれません。
1. 研究の背景と目的
動物が変化する環境に適応するためには、過去の学習(報酬と特定の刺激の結びつき)を柔軟に更新する必要があります 。本研究では、ショウジョウバエをモデルとして、「報酬(砂糖)そのものに再度曝露されること」が、すでに形成された記憶にどのような影響を与えるかを調査しました 。
2. 主な知見
- 記憶の減退(価値の低下): 特定の匂いと砂糖を関連付けた学習の後に、砂糖(無条件刺激:US)だけに短時間再曝露させると、その匂いに対する接近行動(記憶の表現)が顕著に減少しました 。+3
- 広範な効果: この現象は、同じ報酬(砂糖)に関連付けられた複数の異なる記憶に対して同時に作用します 。
- 特異性: 記憶の減退は、学習時に使用した報酬(例:ショ糖)に対してのみ起こり、通常の餌や、カロリーのない甘味料(アラビノース)では引き起こされませんでした 。
- 記憶の痕跡は維持される: 驚くべきことに、行動レベルでは記憶が失われたように見えても、脳内の神経細胞(キノコ体出力神経:MBON)レベルでの記憶の痕跡(エングラム)は消去されずに残っていることが示されました 。
- 文脈と新奇学習による制約: 報酬への再曝露が「飼育容器」で行われた場合は記憶が減退しましたが、「学習時と同じ装置内」で行われた場合や、新しい匂いとの組み合わせ(新たな学習)として提示された場合には、元の記憶は維持されました 。
3. メカニズムの解明
- ドーパミン細胞との関係: ドーパミン神経(PAM-DANs)の人工的な活性化も記憶の減退を引き起こしますが、報酬の再曝露による減退とは異なるメカニズムで動作していることが判明しました 。+3
- 能動的な忘却との違い: この現象は、これまで知られていたドーパミン駆動型の「能動的な忘却(Active forgetting)」経路とは独立したプロセスであることが示唆されています 。
4. 結論と意義
この研究は、特定の報酬を再経験するだけで、それに関連する複数の記憶が包括的に再評価(減退)されるメカニズムを明らかにしました 。これは、個別のきっかけ(匂いなど)に再曝露させる「消去学習」に代わる、依存症などの不適応な記憶を修正するための新たなアプローチとして期待されます 。
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