バッタ博士の異常な愛情 恋愛と婚活の失敗学 (光文社新書 1386) 新書 前野ウルド浩太郎 (著)
バッタ博士の研究シリーズも面白いですがこれは番外編?的な感じでバッタへの異常な愛を注ぐ昆虫学者が、その情熱を「人間界の恋愛・婚活」に転用した筆者の婚活の歴史を記したものです。バッタとの愛が成就したかは?ですが人間の場合はお互いのインタラクションで成否が決まるわけで筆者の「バッタを捕まえるように、運命の人も捕まえられるはずだ」という仮説が残念ながら成り立たなかった顛末が記されています。 読みどころとしては前述のような生物学的な仮説に伴う戦略が恋愛に導入されていることにあります。①バッタの採集技術、②フェロモンと走性、③フィールドワークからの不屈の精神、④擬態による環境適応 というポイント(詳しくは↓)です。面白いとは思ったもののやはり人間は相互のインタラクションで惹かれあうものである以上、採集活動といった一方的な方向性でのものではうまくいかないのかもしれません。ただ理系っぽい仮説→実験→検証→考察→仮説…というPDCAが回されているのはなんとなく共感してしまいました。自分の経験はバッタ博士と比較するとはるかに浅いですが恋愛は経験が多ければ常に良いというものではないのかもしれません。ただ行動を内省する中で人間として成長をできる過程が得られるのではないかと改めて思います。
1. 「バッタの採集技術」を合コンに応用
バッタ研究において、広大なサバンナから標的を見つけ出すには「動体視力」と「気配を消す能力」が不可欠で、博士はこれを合コンの席で実践。具体的な行動として 狙った女性(ターゲット)の微細な表情の変化や、グラスの減り具合を、茂みに潜むハンターのような鋭い観察眼でチェック。結果は相手に「監視されている」という恐怖心を与えてしまい、失敗に終わります。
2. 「フェロモン」と「走性」の理論
昆虫が特定の化学物質や光に引き寄せられる性質(走性)を、人間界の「モテ」に応用しようと試みました。バッタが好む植物や環境があるように、女性が好む「清潔感」や「経済力」といった要素を、一種の誘引フェロモンとして定義。自分をいかに「高栄養な餌(魅力的なオス)」としてプレゼンするかをデータに基づいて戦略を立てましたが… 人間の感情は昆虫の反射行動ほど単純ではなく、計算通りの反応が得られずに困惑することになります。
3. フィールドワークで鍛えた「不屈の精神」
アフリカの砂漠で、いつ現れるかわからないバッタを何日も待ち続ける「待機能力」と「忍耐力」を婚活に転用。婚活パーティーやマッチングアプリにおいて、どれだけ冷たくあしらわれても、あるいは「収穫ゼロ」の日が続いても、「これは砂漠でバッタを探しているのと同じだ」と自分に言い聞かせ、精神的なダメージを無効化。 メンタルは維持できましたが、効率の悪さ(下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる方式)は改善されず、徒労に終わる回数だけが増えていきました。
4. 「擬態」による環境適応
バッタが周囲の風景に溶け込んで天敵から身を守る「擬態」の技術を、婚活の場でのファッションに応用。 それまで「バッタを捕まえやすい服(全身緑のジャージなど)」しか持っていなかった博士が、婚活というフィールドに適応するために、店員さんに勧められるがまま「モテ服」をフル装備。自分を「普通の婚活男性」に擬態させましたが、口を開けばバッタの話が止まらないため、すぐに「中身がバッタ博士であること」を露呈してしまいました。


