運動トレーニングによる持久力の向上が、筋肉などの末梢組織だけでなく、脳(中枢神経系)の特定の神経回路の適応にも影響しているという研究結果。従来、運動による持久力の向上は、筋肉、心血管系、代謝系などの「末梢」の変化として捉えられてきましたが、脳の腹内側視床下部(VMH)に存在するSF1(ステロイド産生因子1)発現ニューロンにより、持久力運動をできる脳に切り替えを図っているということが明らかにされています。持久系運動も慣れてくると長さの感覚というのが変わってくるというのはなんとなく納得いくもので水泳始めたときは25mでもきつかったのが50,100mと泳いでくるともう1500m連続で泳ぐのもさほど苦しいとは感じなくなってくるもので…脳の中にもやはり変化が起きていたというのは納得な内容です。 具体的にはVMH SF1ニューロンの活性が上昇し、トレーニングを繰り返すと、運動後の活性化の程度と活性化するニューロンの数が増加 。また 繰り返し運動を行うことで、SF1ニューロンの興奮性が高まり、興奮性シナプスの密度が増加します。つまり、運動の履歴が脳の構造変化として記録されます 。この効果自体を確かめる実験として 薬剤や遺伝的手法でSF1ニューロンの働きを阻害すると、トレーニングをしても持久力が向上せず、代謝の改善も見られなくなる一方で 逆に、運動後にSF1ニューロンを人工的に刺激すると、通常のトレーニング以上の持久力向上が認められたとのこと。ではこのニューロンの役割とは何ぞや?とのことですが運動による「体の適応(スタミナアップや代謝改善)」を司る脳内の司令塔とのことです。(詳しくは↓リンク)これからは脳も持久系トレーニングを施すことでより効率的に持久系アスリートの能力向上に寄与するようになってくるのかもしれません。
1. 運動による「持久力の向上」を制御する
SF1ニューロンは、運動トレーニングの効果を体に定着させるスイッチのような役割を担っています。
- トレーニング効果の消失: 実験でSF1ニューロンの働きを阻害したマウスは、3週間のトレーニングを行っても持久力が向上しませんでした 。
- 人工的な強化: 逆に、運動後に光遺伝学(オプトジェネティクス)を用いてSF1ニューロンを人工的に刺激すると、通常のトレーニング以上の持久力向上が認められました 。
2. エネルギー源の切り替え(燃料選択)を最適化する
効率よく長時間動くためには、糖質(カーボ)だけでなく脂質(ファット)をうまく燃焼させる必要があり、効率的に脂肪を燃やす方向に指令を出します。
- 脂質利用の低下: SF1ニューロンの機能が欠損したマウスは、低強度の運動時でも脂質よりも糖質を優先的に消費してしまい、エネルギー効率が悪くなることが確認されています 。
- 代謝の司令塔: このニューロンは、運動中に筋肉などの末梢組織がどのエネルギー源を使うべきかを適切に調整する信号を送っています 。
3. 筋肉の改造(遺伝子レベルの変化)を促す
運動をすると筋肉内でエネルギー効率を高めるための遺伝子変化が起こりますが、これにもSF1ニューロンからの信号が必要です。
- 筋肉への影響: SF1ニューロンの働きを止めると、通常なら運動によって起こるはずの「筋肉内の代謝関連遺伝子の発現変化」がほとんど消失してしまいました 。これは、脳(SF1ニューロン)が筋肉の再構築を遠隔でコントロールしていることを示唆しています 。
4. 運動の履歴を「脳の構造変化」として記録する
SF1ニューロン自体が運動の繰り返しによって変化(可塑性)し、より活性化しやすくなります。
- 興奮性の向上: トレーニングを積んだ個体では、SF1ニューロンの「興奮性」が高まり、より多くの神経活動が見られるようになります 。+3
- シナプスの増加: 運動の履歴によって、SF1ニューロン上の興奮性シナプスの密度が約2倍に増加し、外部からの刺激を受け取りやすい構造へと変化します 。



