妊娠中、母親の細胞は胎盤を抜けて胎児の体内へと移動し、子の体内に数十年間にわたって生き残り続けます。これを母体マイクロキメリズム(MMc)と呼ぶのですが子が母親由来の抗原(NIMA)に対して寛容になり、将来の妊娠(自身の子供が母親と同じ抗原を持っている場合)での流産を防いだり、移植の成功率を高めたりする効果がどのように起こっているのかを明らかにした論文となってます。そのメカニズムとしてわかってきたのは今回の研究で、実は平和を守っているのは、数ある細胞の中でも「特定の白血球(LysMとCD11cという印を持つ細胞)」だけだったということです。例えるなら、子どもの体という国の中に、お母さんの国から来た移住者がたくさんいる中で、「外交官」の役割をしているごく一部の人たちだけが、両国の平和を維持していたということ。さらに重要なのはお母さんの細胞が全体としてどれくらい多いか(数)ではなく、特定の役割を持つ細胞がちゃんといるか(質)が、免疫の平和には決定的に重要だったとのこと。「外交官細胞」は、子どもの体の中にある「免疫のブレーキ役(制御性T細胞)」を教育し、お母さんの成分を攻撃しないように言い聞かせていることも分かりました。この機構がわかったことで将来的には以下のようなことに役立ちそうです。母親の見守りが一生を通じて続くというのはある意味、母子のつながりの強力さというのが改めて認識される事実でした。
- 自己免疫疾患: 自分の体を攻撃してしまう病気に対して、この平和維持の仕組みを再現して治療に役立てる。
- 安全な妊娠: 将来、子どもが大人になって妊娠した際、お母さんの成分と似た赤ちゃんを「敵」と見なして攻撃(流産)してしまうのを防ぐ治療。
- 臓器移植: 移植した臓器を「敵」と見なさないように、この「外交官細胞」の仕組みを応用して、拒絶反応を抑える新しい薬の開発。
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