視覚系は「物体認識の腹側経路(Ventral pathway)」と「空間・動作処理の背側経路(Dorsal pathway)」の2つに分類されてきたのですが「感情や様子を視覚的に読み取る=空気を読む」ための第3の回路というべき仕組みが備わっているというのを提案した内容となっています。既存の2つは静止情報から読みだされるものですが第3の回路は動的な変化=微分を知覚するもので表情、視線、体の動きといった「動的な社会的合図」を専門に処理するためにあるようで「他者の動的な振る舞いから、その意図や感情を即座に読み解くこと(社会的知覚)」が目的となっています。具体的には①「動的な社会的合図」の専門的な処理、②他者の意図や行動の予測、③広範囲な社会環境のモニタリング(視野の特性)、④広範囲な社会環境のモニタリング(視野の特性)といったものでまさに社会的環境、コミュニティの中でうまくやっていくために身につけられたものということが出来そうです(霊長類ではマカク猿での研究で詳細な仕組みが明かにされているとのこと)。発達障害などでこの回路がうまく動いていないという事例もあるとのことでメカニズムと治療法について今後、進展に貢献する成果となる可能性はありそうです。ともあれ「視覚から動的に読み取る」というのが基本なので音声のみの電話会議というのは口調のみでの判断となり、やりにくいというのが感じるのは納得です。 第3の回路の詳細な役割は以下↓
1. 「動的な社会的合図」の専門的な処理
従来の腹側経路が「それが誰か(顔の識別)」という静止した情報を得意とするのに対し、第3の回路は刻一刻と変化する動きの情報を処理します。
- 表情の変化: 相手が笑ったのか、怒っているのかといった顔の動き。
- 視線の動き: 相手がどこを見ているのか、何に注目しているのか。
- 体の動き(生物学的運動): 歩く、手を振る、手を伸ばすといった人間特有の動作。
2. 他者の意図や行動の予測
単に「動いている」ことを認識するだけでなく、その動きから**「相手が何をしようとしているのか(意図)」や「どのような感情状態にあるのか」**を計算します。これにより、私たちは他者の次の行動を予測し、適切な社会的反応(対話や回避など)をとることができます。
3. 広範囲な社会環境のモニタリング(視野の特性)
この回路の中心である「後部上側頭溝(pSTS)」は、視野の右側か左側かに偏らず、視野全体(両側)の情報に等しく反応するという特徴があります。
- 役割: 自分がどこを見ていても、周囲にいる複数の人々の動きや相互作用を同時に、かつ継続的に把握し続けることができます。これは、複雑な集団の中での社会生活において不可欠な能力です。
4. 腹側・背側経路との補完
- 腹側経路(Ventral): 「あの人は誰か?」というID(特定)を確認。
- 背側経路(Dorsal): 「物体がどこにあるか?」という空間把握。
- 第3の経路: 「あの人は今、自分に対して何をしようとしているか?」という社会的な文脈の理解。
このように、第3の回路は「動くもの」の中でも特に**「人間(生物)の動き」に特化**して、その背後にある意味を読み取るという、高度な社会性を支える役割をしています。



