スポーツや芸術の分野では神童と呼ばれるような人が常に注目を集めるわけですが常に教育の分野で議論となる早期教育の効果について分析した内容です。結論として最終的に卓越した成果を上げる人間は多角的経験を積んでいるということで早期選抜よりは多様な経験を後押しする内容とはなっています。まさに大器晩成に必要な要素を具現化した内容かもしれません。 この論文で明らかにされたのは以下の3つ。
「若き天才」と「大成する大人」は別物: 若くして卓越した成績を残す若者と、後に大人になって世界トップレベルに到達する人々は、時間の経過とともに見ると、実はほとんど重ならない(別の集団である)ことが判明しました。
早期の専門特化は「早期のピーク」を生む: 若いうちに圧倒的な成績を残す人は、一つの分野に絞った集中的な練習(専門特化)を行い、多角的な経験が少なく、初期の成長スピードが非常に速いという特徴があります。
世界トップレベルの大人(大成者)は「多様な経験」をしている: これに対し、大人になってから世界最高峰に到達する人々は、初期段階で特定の分野に絞った練習量が少なく、むしろ多様な分野(多領域)での経験を積んでいる傾向があります。また、初期の特定の専門分野における成長スピードは、むしろ緩やかであることも分かりました。ただ結果として大成した人は多様な経験を特化した分野で生かせたというのが(結果としてそうなったということかも知れませんが)やや異なるようです。
ではこの多角的経験を積むのはいつまでが良いのか?ですが平均して「15歳〜16歳前後」で本格的な専門特化を決意しているケースが多いことが示されています。具体的には 12歳頃まで(サンプリング期): 特定の種目や分野に絞らず、複数のスポーツや活動を幅広く経験する時期。この期間は、遊びに近い要素(Deliberate Play)が多く、多様なスキルを身につけます。13歳〜15歳頃(特化期): 徐々に活動を1〜2つの分野に絞り始め、トレーニングの専門性が高まっていく時期。16歳以降(投資期): 特定の分野に完全に専念し、膨大な練習(Deliberate Practice)を積み重ねる時期。とのことで結構、中学校付近までは特化しなくて良いということになります。
この行動は2つのメリットがありそうです。(1)スキルの転移(Transfer): ある分野で学んだ「コツ」や「感覚」が、別の分野(本命の専門)に無意識に応用され、誰も真似できない独自の強みになる。(2)マッチングの最適化: 自分が本当に情熱を持てて、かつ才能がある分野がどれなのかを、多くの経験を通じて「見極める」ことができる。 その具体例などに関しては以下…
1. スポーツの例:多種目への参加
世界トップレベルのアスリート(スーパーエリート)に見られる典型的なパターンです。
- 球技の掛け持ち: サッカー選手が幼少期にテニス、バスケットボール、ハンドボールなども並行して行う。これにより、足だけでなく手を使った空間把握能力や、異なる戦術的思考が養われます。
- 異なる身体操作: 陸上競技の選手が、子供の頃に水泳や体操、格闘技などを経験する。これにより、特定の動きに固執しない「身体の柔軟な使い方(運動の多様性)」が身につきます。
- 遊び(非構造的な活動): コーチに教わる「練習」ではなく、公園で友達とルールを自分たちで作って遊ぶような活動。これが創造的なプレーや適応力を生むとされています。
2. 芸術・音楽の例:複数楽器とジャンル
- 複数の楽器: ピアニストが子供の頃にバイオリンや打楽器も触ってみたり、合唱団に参加したりする。これにより、リズム感や音色の捉え方を多角的に理解します。
- ジャンルの横断: クラシックの教育を受けながら、ジャズや即興演奏、あるいは民族音楽などに触れる。これが後の独自の表現スタイル(独創性)につながります。
3. 科学・学問の例:専門外の活動(ノーベル賞受賞者の特徴)
論文でも引用されることが多い、非常に興味深いデータです。
- 芸術的趣味: 成功している科学者は、一般的な科学者に比べて「音楽、描画、彫刻、文学」などの本格的な趣味を持っている確率が非常に高いことが示されています。
- 学際的なアプローチ: 若い頃に数学、生物、物理など幅広い基礎科目を深く学び、特定の研究テーマに絞り込むのを遅らせることで、後の研究で「異なる分野のアイデアを組み合わせる」能力が高まります。
4. ビジネス・チェスの例
- 職種・スキルの越境: 最初から一つの特定のスキル(例:プログラミングのみ)に特化せず、営業、デザイン、プロジェクト管理など異なる役割を経験すること。
- 多様なパターンの学習: チェスにおいて、特定の定石(型)を暗記するだけでなく、あえて不利な状況から始める遊びや、異なるボードゲームを経験することが、未知の局面での対応力を育てます。



