その〈男らしさ〉はどこからきたの? 広告で読み解く「デキる男」の現在地 (朝日新書) 新書 – 2025/8/12 小林 美香 (著)
自分の若年期はやはり男らしさこそが正義だというのが大きな価値観として居座っていた時代に育ったと認識しています。そういった中では体育が苦手であまり勉強もパッとしていなかった自分はコンプレックスがかなり強く、それに対する解決策を模索した?のが中高と大学時代でした。 そんな過去を思い出しながら読んでみたのがこの本です。 そもそも根幹にあった男らしさというのは何なのかに対してジェンダー表象や写真についての研究を行う著者が、街中やメディアに溢れる「広告」の中に潜む男性像を分析し、社会が男性に求めてきた「男らしさ」の正体や変遷を読み解いた一冊になっています。
男らしさの広告としては「24時間戦えますか」に象徴される企業戦士のイメージから、近年のメンズ脱毛や筋トレに見られる「清潔感」や「自己管理」の要請へと、理想とされる男性像が変化していることを指摘します。高層ビルを背にしたスーツ姿や、命令口調で上昇志向を煽る広告などは、男性に対し「経済的成功」や「外見のケア」こそが能力の証明であると刷り込み、新たなプレッシャーを与え続けています。ただある意味この価値観の植え付けは分かりやすいので冷静に一歩下がればまたこう来たかという目線で見ることが可能かとは思います。
決してそういった価値観が悪いわけではないとは思うのですが自分の考えと合うのかという視点が常に必要になるのかと思います。そういった観点では「自分の価値観」をブレずに持っておきたいとところです。以下のようなアプローチで自分らしく生きることが求められるのかなあとは思います。
- 広告に「ツッコミ」を入れて距離を取る
- 「男磨き」の競争から降りる
- 「弱さ」や「ケア」を自分の手に取り戻す
これは男性によらず女性に対しても旧来からのステレオタイプの価値観というのはまだまだ根強くあてはまるものなのだろうなと感じます。その他、詳細な内容↓
1. 本書の核心テーマ:広告が作る「理想の男性像」の解体
本書の目的は、私たちが普段無意識に見ている広告(ポスター、CM、看板など)が、いかにして「あるべき男性像」を刷り込んでいるかを暴くことにあります。
かつての「24時間戦えますか(栄養ドリンク)」という企業戦士のイメージから、近年の「清潔感・脱毛・筋トレ」といった自己管理を求める圧力まで、広告が提示する「デキる男」の虚像を批判的に分析しています。
2. 具体的な分析事例
著者は具体的な広告のパターン(トロープ)を挙げ、それらがどのようなメッセージを発しているかを解説しています。
- 「背景高層ビルおじさん」:
- 事例: 缶コーヒーやビジネス雑誌の広告などで、高層ビル群を背景にスーツ姿の男性が腕を組んだり、遠くを見つめたりしている構図。
- 意味: 「成功」「支配」「都市の覇者」といったイメージを視覚化し、男性の成功=経済的地位という価値観を強化しています。
- 「命令する男・睨みつける男」:
- 事例: 本田圭佑氏などの著名人が登場する広告や、自己啓発系の広告。
- 意味: 正面から強い視線を向け、命令口調で語りかけることで、「指導者」「強さ」を演出し、見る側(男性)のコンプレックスや上昇志向を刺激します。
- 「ケアと自己投資」の罠:
- 事例: メンズ脱毛、メンズコスメ、筋トレ(ライザップ等)の広告。
- 意味: かつては「男が化粧なんて」と言われた時代から一変し、現在は「清潔感=マナー」「外見=能力」として、身だしなみが新たな競争(能力主義)の種になっていることを指摘しています。「モテ」や「出世」のために自分の体を管理(ケア)しなければならないという、新しいプレッシャーの出現です。
3. 章構成と論点
本書は、身近な広告観察から始まり、より深い社会構造へと論を展開しています。
- 序章: 「男らしさ」の広告観察(男性表象のパターン分類)
- 第1章: ドリンク広告と働く男(栄養ドリンク、コーヒー、ビールに見る「企業戦士」の歴史)
- 第2章: スーツとパンツ(装いが作る身体の価値、カルバン・クラインの下着広告など)
- 第3章: 自己鍛錬としてのメンズ美容(「推し活」視線や、能力主義と結びつくケア)
- 第4章: 「デキる男」を目指すのは何のため?(男磨き界隈、マノスフィアとの比較)
- 終章: 教育・医療の専門家との対話から考える「これからの男性性」
4. 著者のメッセージ
小林美香氏は、これらの広告が単に商品を売るだけでなく、男性自身を「男らしさの鎧(よろい)」の中に閉じ込め、生きづらさを助長していると指摘します。広告の意図を「読み解く(リテラシーを持つ)」ことで、その呪縛から距離を取り、より自由な生き方を模索することを提案しています。



