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持久系アスリートの腸活

Front. Physiol., 14 May 2025,Sec. Exercise Physiology
Volume 16 – 2025 | https://doi.org/10.3389/fphys.2025.1551284
“Gastrointestinal function and microbiota in endurance athletes”

腸内環境は脳だけでなく筋肉にも影響を与えていることがわかりつつありますが特に持久系アスリートに対しての知見をまとめた今年5月のReview論文を読んでみました。マラソンなどの持久運動が消化管に与えるダメージ(GIダメージ)とその対策、および腸内細菌叢が持久系パフォーマンスに及ぼす影響について、最新の知見をまとめた内容で持久運動は血流低下や熱ストレスにより消化管損傷を引き起こし、栄養吸収を阻害して回復に悪影響を与えますが、水分・糖質補給や着圧ウェア(着圧ソックス)で軽減できる可能性があるとのこと。また、運動は腸内細菌叢を変化させ、特定の細菌が産生する短鎖脂肪酸(特にプロピオン酸)がパフォーマンス向上に寄与することが示唆されています 。 ハーバード大の研究で乳酸を食べる菌:ベイヨネラ菌(Veillonella atypica)が乳酸をエネルギーに再変換する(「乳酸」をエサとして食べ代わりに「プロピオン酸」を放出=再生工場になっている)役割を担っていることも確認されており、これからはエネルギー補給、スタミナという観点だけでなく腸内コンディショニングが新たなポイントになりそうです。具体的な推奨としては以下。

① 「リーキーガット」を防ぐ対策: 日頃から「グルタミン」(腸のエネルギー源)と「亜鉛」、そして「オメガ3脂肪酸」を摂取し、腸の粘膜を分厚く強くしておく。具体的には水溶性食物繊維: 大麦、オートミール、海藻、キウイ。
② ミトコンドリア機能を高める「酪酸」具体的には発酵食品: ヨーグルト、キムチ、納豆。
③ 抗酸化と腸活のセット「ポリフェノール」活性酸素を除去するだけでなく、特定の善玉菌(Akkermansia)などを増やす作用。具体的にはブルーベリー、ダークチョコレート(カカオ70%以上)、緑茶。

(論文の詳細は↓) 

1. 持久運動と消化管(GI)ダメージ

持久運動、特に長時間や高強度の運動は、消化管に重大なダメージを与えることが知られています。

  • メカニズム: 運動中は筋肉への血流が優先されるため、消化管への血流が一時的に減少し(虚血)、組織の低酸素状態や酸化ストレスを引き起こします 。これにより、腸管バリア機能が低下し、細菌や毒素が血中に漏れ出す「Leaky Gut」や炎症反応が生じます 。
  • 悪化させる要因:
    • 脱水・熱ストレス: 発汗による脱水や体温上昇は、皮膚への血流を増加させ、消化管血流をさらに減少させるため、GIダメージの最大の要因となります 。
    • 運動強度: 強度が高いほど筋肉への血流配分が増え、GIダメージが大きくなります 。
    • 低酸素環境: 高地トレーニングのような低酸素環境もGIダメージを増大させます 。
  • 影響: GIダメージは、運動後の栄養(グリコーゲンやタンパク質)の消化・吸収を遅らせ、リカバリーに悪影響を与える可能性があります 。

2. GIダメージを軽減するための戦略

論文では、運動誘発性のGIダメージを軽減するためのいくつかのアプローチが紹介されています。

  • 水分と栄養補給: 運動前・運動中の炭水化物を含む水分の摂取は、消化管血流を維持しダメージを軽減する可能性があります 。
  • 着圧ウェア: ランニング中に着圧ソックス(25mmHg)を着用することで、静脈還流が促進され、中心部の血流が維持されるため、腸管損傷マーカー(I-FABP)の上昇が抑制されたという報告があります 。
  • サプリメント:
    • 牛初乳(Bovine colostrum): 2週間の摂取でGIダメージ軽減に効果が見られた研究があります 。
    • その他: グルタミンやプロバイオティクスについては結果が一貫しておらず、確実な効果はまだ明らかではありません 。
  • 冷却: 冷たい水の摂取については、深部体温の上昇を抑える効果はあるものの、GIダメージの直接的な軽減には至らなかったという研究結果が紹介されています 。

3. 持久運動と腸内細菌叢の変化

運動は腸内細菌叢の組成(構成)に変化をもたらします。

  • 単発の運動の影響: フルマラソンやウルトラマラソンなどの過酷な運動後には、特定の細菌(例:Veillonella属やStreptococcus属など)が増加し、酪酸産生菌(Faecalibacteriumなど)が減少する傾向があります 。
  • トレーニングの影響: アスリートと非アスリートの比較では、アスリートにおいて特定の菌(BacteroidesPrevotellaなど)の多さが報告されていますが、研究によって結果に不一致(例:Faecalibacteriumが多いとする報告と少ないとする報告がある)が見られます 。これは、個人の「エンテロタイプ(腸内細菌の型)」の違いが影響している可能性があります 。

4. 腸内細菌叢とパフォーマンス向上

特定の腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸(SCFA)、特に**プロピオン酸(Propionate)**が持久力パフォーマンスを向上させる可能性が示唆されています。

  • Veillonella atypica: マラソン後に増加することが確認されており、乳酸をプロピオン酸に変換することで、持久力を向上させることがマウス実験で示されました 。
  • Bacteroides uniformis: 日本の長距離ランナーに多く見られ、α-シクロデキストリンの摂取によりこの菌が増加し、持久走タイムが短縮したという報告があります 。この菌が産生するプロピオン酸や酢酸が、肝臓での糖新生を促進している可能性があります 。
  • 今後の課題: SCFAが「エネルギー源」として働いているのか、代謝を調節する「シグナル」として働いているのか、その詳細なメカニズムの解明が必要です 。
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仕事は半導体デバイス開発。 趣味としているEnduranceスポーツと 日常の出来事を綴ります。

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