世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ (文春新書 1478) 新書 – 2024/12/17
筆者は銀行勤務の後、アメリカにわたりヘッジファンドに対するマクロ指標の予測を行う投資コンサルティング会社に勤務。バブル崩壊、アベノミクストレード、日本の脱デフレなどをアメリカ側の立場から予測,的中させてきた経験から日本に今おかれたポジションと優位性について洞察を行った本です。自分が子供だった80年代社会人になった2000年代は正に筆者の新自由主義(小さな政府、マーケットによる適正化の尊重、個人の能力個性の重視)が全盛だった世界でした。グローバルで民主的、より平等な価値観というのがこれからの流れでしたが2008年の世界金融危機でその信認を大きく失い、2016年以降のポピュリズムの台頭を経て、2020年以降のパンデミックや地政学的対立によって、その実質的な終焉へと向かう「ゲームチェンジ」が加速しているという流れが明確になってきたと言えそうです。もともとの新自由主義で最もメリットを享受したのは中国。米国中心に考えると過去の日本のように邪魔になってきたことから抑え込みにかかっているというのが現在の流れ。東アジアの戦線では強い日本の復活を持って対抗しようとしているということと今まで30年間日本が抱えている構造的問題が逆に功を奏する(可能性)というのが筆者の分析です。数十年に一度ともいわれる相対的な有利なポジションにいる日本がこの環境を活かせるかは地力次第というところもありますが自分としては何とか半導体分野での返り咲きを狙っていきたいところ。 なぜ日本が有利なポジションにいるのかは以下の3要素です。
(1)「失われた30年」が温存した社会構造
- 世界が新自由主義とグローバリズムに傾倒する中で、日本は雇用を優先し、徹底的なリストラや賃金カットを避けた結果、「失われた30年」という長期停滞を経験しました。
- しかし、これは逆に貧富の格差拡大を米国ほど進めず、社会の安定を保つという側面があり、新自由主義が崩壊した今、かえって構造転換の伸びしろとして機能しています。
- 現在、労働力不足により賃金上昇とインフレ基調への転換が不可避となり、生産性の低い企業は淘汰され、経済全体が高付加価値化を迫られる、という好循環を生み出すチャンスが生まれています。
(2)地政学的な重要性の再認識と「信頼できるパートナー」としての地位
- 米中対立が激化し、世界が「新自由主義・グローバリズム」から「国家が産業を支援する・信頼できる国とだけ繋がる」という新しい秩序へ移行する中で、米国は中国を抑えるための強力なパートナーを求めています。
- 政治が安定し、高い技術力を持ち、地理的にも戦略的に重要な日本は、米国にとって最も信頼できるパートナーの一つと見なされています。このため、米国は日本に「強い日本」になることを期待しており、マクロな流れとして日本に追い風が吹く市場環境にあると指摘しています。
- 特に、中国依存のリスクを避けるために、世界のサプライチェーンやマネーが日本に流入する可能性が高まっています。
(3)「大きな政府」への回帰に適した資質
- 新自由主義の終焉とともに、世界は「小さな政府」から「大きな政府」へと回帰する傾向にあります。
- 歴史的に国家や政府が経済に関与する政策運営が得意(?)な日本は、この新たな時代に適応しやすく、国家が支援する先端製造業の育成などが進みやすい土壌があります。



