Books

古代日本の匠の技

古代日本の超技術〈新装改訂版〉 あっと驚く「古の匠」の智慧 (ブルーバックス B 2249) 新書 – 2023/12/14 志村 史夫 (著)

半導体材料研究者が迫った日本の技術の智慧を解説した本です。取り上げられているのは三内丸山遺跡(縄文人の穿孔技術)、前方後円墳(なぜ、どのように作られたか)、五重塔を支える心柱、付随してこれを支える木材加工、和釘や日本刀などの古代鉄、奈良の大仏建立です。同じような本あれど考古学でなく理系の人が迫ったという視点が斬新な本です。 主なところとしては以下…

倒れない五重塔の秘密:地震大国日本において、木造の五重塔が倒壊した例は歴史上皆無であるといいます。その驚異的な耐震性の鍵を握る「心柱」の構造を、現代の超高層ビル(東京スカイツリー)にも応用された制振技術の観点から解き明かします。心柱の作用は振り子と閂という2つの効果があり、五重塔自体もキャップのように積み重なっているというのが耐震性に大きく聞いてそうです。 古代鉄のクオリティ:法隆寺の和釘に見られる驚くべき耐食性や、日本刀のしなやかさと硬度を両立させる多層複合構造。これらが、現代の金属工学から見てもいかに合理的で、素材に含まれる「不純物」さえも巧みに利用した技術であったかを論じます。そもそもの鉄自体が今の大量生産とは異なりたたらの製法を使っていることにも秘密があります。  前方後円墳の「かたち」の謎:日本各地に存在する巨大な前方後円墳。なぜあの独特な「鍵穴」の形をしているのか。著者は、考古学的な通説とは異なる、力学的・土木工学的な観点からユニークで説得力のある仮説を提示:前方後円墳は墓だけでなく水田のかんがい施設として建設された。 縄文時代のオーパーツ:三内丸山遺跡に見られる巨大建築の技術や、現代のレーザー加工に匹敵するとされる翡翠の穿孔技術など、定説を覆しかねない縄文人の高度な技術力にも光を当てます。

筆者の専門である半導体分野とのアナロジーに関しては日本刀、和釘、穿孔技術など取りあげられています。 

①日本刀 = 異種材料を組み合わせた「半導体ヘテロ構造:硬いが高価で脆い「刃金」と、柔らかく安価でしなやかな「心鉄」。これら異種の鉄を組み合わせることで、単一の素材では決して実現できない「折れず、曲がらず、よく切れる」という究極の機能デバイスを実現。また、鉄の特性を決定づける炭素の含有量を精密にコントロールする様は、シリコンにごく微量の不純物(ドーパント)を加えて電気的特性を制御する半導体のドーピング技術と親和性あり。

②和釘=古代の製鉄法「たたら製鉄」によってドーピングされたスラグ(ケイ酸塩系のガラス質)などの不純物が、鉄の表面に緻密で安定した保護皮膜(不動態皮膜)を形成するのを助け、内部の鉄を腐食から守る役割を果たしたと分析します。

③穿孔技術:まさにこれは半導体チップを切り出す際のレーザーグルービングとアナロジー。ただレーザーで破断した断面より穿孔技術で形成された切断面の方がはるかにきれいであること指摘されています。

古代から比べると概して豊かになり便利になった世の中ですがそれでもなおこういった知恵の世界というのは先駆者たちがいたということに改めて驚かされました。今とは異なり時間の流れ方も違っていたのでじっくりと技術の完成度を上げることが許されたというのもあったのかと思います。苦労してでも遠回りして完成度を上げる。そんな姿勢がゆるぎない技術として立ち上がり、スカイツリーに採用された心柱構造など今に活路を見出しているのだと思います。まさに「温故知新」。

Please follow and like us:

仕事は半導体デバイス開発。 趣味としているEnduranceスポーツと 日常の出来事を綴ります。

One comment on “古代日本の匠の技

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です