アテンション・エコノミーのジレンマ 〈関心〉を奪い合う世界に未来はあるか 山本 龍彦 (著)
インターネットの世界は様々なマスメディアの一方的な視点から解放される自由への扉だと思っていたのもつかの間、スマホが普及し、誰もが識別される個人端末からネットにアクセスするようになるとそこで待っていたのは「関心」の奪い合いの世界。関心こそが価値になる世界は逆に言えば制御されやすい世界になってしまったともいえるのかもしれません。使うプラットフォームはX,TikTok,Facebook,YouTube,Googleなど一部のメディアに逆に集中し、広告、お勧めが個人の属性、嗜好に合わせて配信、お勧めされる世界は新・マスメディア=プラットフォーム企業で関心を奪い合い、思想や嗜好をタコ壺化する世界となってしまっているように思います。 情報空間が私たちの自己決定から民主主義の行方までを左右する世界にデジタル社会の法秩序論(憲法学)の山本さんが切り込んだ本です。
本書は目次にあるようにインターネット社会と対峙する各方面の人との対談とそれに対する解説といった形で展開されていて非常に読みやすい内容です。結局のところ自律的に自由に知る権利とアテンションエコノミーがどのように対峙していくかというのは難しいところはありますがこの危険性に対して明確に対策仕様としているのは欧州です。EUではデジタルサービス法=DSAが成立し、ラビットホール=底なし沼に陥るようなプロファイリングやレコメンデーションに対して規制をかける取り組みがなされています。一方でテクノリバタリアンたちはむしろそのタコ壺化を加速させてそれを政治的共同体にしてしまえばよいという考え方で本人が不自由、不快と感じるのであれば別の共同体に乗り移ればよいという考え方です。これらは対極にあるわけですが後者はさすがにやり過ぎ感はあるかなと思うとやはりどこかに「情報的健康」を確保するために個人がどこまで情報、関心をプラットフォームに供給して良いのかというのは自律的に判断させるべきなのかとは思います。(形骸化させないためにもプラットフォーム企業がどのようなことをしているかというのは教育されるべきなのかと)現時点ではユーザー側も意図的に中毒にならないような工夫が必要ですが理解したうえで利用するということが必要になってくるのだとは思います。
【目次】
第1章 変容する言論空間
対談――メディアに与える影響 新谷学(株式会社文藝春秋取締役・総局長)
対談を終えて ナビゲーションを受ける自由と、ナビゲーションからの自由
第1章 変容する言論空間
対談――メディアに与える影響 新谷学(株式会社文藝春秋取締役・総局長)
対談を終えて ナビゲーションを受ける自由と、ナビゲーションからの自由
対談――コミュニケーションの変容と法(code) 水谷瑛嗣郎(関西大学社会学部准教授)
対談を終えて 情報空間に対する国家の“現れ”という難問
第2章 個人情報と広告
対談――アテンション・エコノミーとプライバシー・個人データ保護 森亮二(弁護士)
対談を終えて 個人データに対する主体性は必要か?
対談――広告ビジネスの行方 馬籠太郎(株式会社電通デジタル)
対談を終えて 「クリエイティブ」は本当にクリエイティブなのか?
第3章 認知の仕組みと自己決定
対談――認知神経科学から見た認知と自由 下條信輔(カリフォルニア工科大学 ボルティモア冠教授)
対談を終えて 「やわらかいクッション」による対抗と「自由」
第4章 生成AIがもたらすもの
対談――生成AIが人に与える影響 栗原聡(慶應義塾大学理工学部教授)
対談を終えて 憲法AIと民主主義
第5章 民主主義の再考
対談――これからの民主主義 結城東輝(弁護士/スマートニュース株式会社)
対談を終えて 「民主主義」の均衡(バランス)を再定義する
第6章 ネット空間の行く末
対談――インターネット文化と思想 木澤佐登志(文筆家・ブロガー)
対談を終えて 私たちが向かう場所、そして憲法――あとがきに代えて
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