Books

AIで変わる世界の認知構造

  AIというと人間との対立構造ととらえられる風潮もあったりしますが基本的には人間の能力を拡張するツールであることは現時点ではまぎれもない事実だと言えます。人間が登場して以来、ここまで知性が上がったのも道具を編み出してきたと言うのが一助になったことは間違いなく今回の”人工知能という道具”も人間落ちの枠組みや社会の統合の理念にどのような影響を与えていくのかというのを考察したのがこの本です。 今までの人工知能論とはやや遠い分野でもある認知論哲学や政治哲学などまで踏み込んだ議論がなされています。
 AIと一言で言ってもかなり進化してきているのが事実、初期は文字変換に使われるようなプログラムにとどまっていましたがそれがデータと結びついて推論=機械学習、データマイニングとして活用され始めたのが90年代、そして得意分野として画像認識、自動運転への応用が考えられ始めた2012年、Alpha碁など認識・制御とインタラクション=身体性(いわゆる深層強化学習)に脚光を浴びた2014年、そして最も苦手と言われた記号処理=知識表現、推論が可能になってきた2020年とさらに人間社会での知識の伝達や社会システムを記述する試み(ex.消費インテリジェンス)がなされています。知能とは正解の構造化とモデル化そしてそれに伴う予測能力だとすれば人間は自身の持つ環境依存で最も生存にかかわる分野でのモデル化”しか”できておらず人工知能は今まで気づけていなかったモデルや何かが蓄積することによって発生しうる効果などに気付いていける可能性が増えた=ある意味ブーストすることができるということが言えそうです。
 このような拡張知能ともいえる時代でどのように認知構造が変わるのか、著者の言葉を借りると「強い同型論」というもので今まで外から覗き込むように中で起こっている法則を観察していたものがそのような理性も宇宙の中で起こる秩序運動の一つに過ぎないという思想です。今までは人間こそが世界に唯一意味を与える存在であったのが人工知能という手段も現れたことによって「知」を生み出す手段として人間自身の知能はOne of themになったと考え得ればよいのでしょう。つまりは人工知能で得られる「知」は人間の理解を超えて発展していく可能性が出てきているということになります。ハラリ氏によれば人工知能を活用して進化した人類はホモ・デウス(神人)という存在となり準来の人間たちを駆逐する可能性があるとのこと。そのような方向性を防ぐためにも知能を生み出す資源としてデータ利用の独占は何らかの方法で避けていく必要があると言えそうです。人工知能得られる結果というのがブラックボックス化しつつあるのが少し怖くもありますがそういったものであると受け入れなくてはいけない時代がやってくるのは覚悟しておかなければならないのだとは思います。
Please follow and like us:

仕事は半導体デバイス開発。 趣味としているEnduranceスポーツと 日常の出来事を綴ります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です