
昔取った杵柄で楽器やスポーツなど「体が覚えている」というのをよく聞くことがあります。
これは主に神経的な体の動かし方を覚えているという感覚で動作記憶が残っているということを意味しているのだと思います。一方で筋肉というのはつけるのは難しいものの堕ちるのは早いという悲しい運命を持っているのですが近年の研究ではそのトレーニング効果自体は決して意味がなくなるものではなく筋肉メモリという形で体が記憶できていることがわかってきました。
「Scientific Reports」で発表された研究で骨格筋の成長は筋肉の遺伝子によって「記憶」され、のちのトレーニングによってさらに大きく成長することを促すという研究結果が出てきてます。DNAには、環境からの刺激に対応するために特定の遺伝子を使うかどうかを判断する「エピジェネティクス」と呼ばれる仕組みがあります。このエピジェネティクスはメチル基の作用によって遺伝子のスイッチのON/OFFをコントロールしており一般的にメチル化は特定の遺伝子発現をOFF、逆に脱メチル化は遺伝子発現をONにする作用です。
筋トレ経験のない被験者の7週間トレーニング/7週間休養のサイクルの実験の結果、被験者たちが最初の7週間で得た筋肉は、その後7週間の休養のあいだに実験前の状態に戻ってしまっていました。これは誰もが知っている結果ですが興味深いのは、休養後に再開された7週間のトレーニングで被験者たちの筋肉が最初の7週間よりさらに大きく肥大したことが観察されたことです。そしてこの結果を裏づけるように、遺伝子のスイッチにも変化が起きており、筋肉が再成長するとき、過去の運動で記憶されたエピジェネティックな情報が、筋肉の遺伝子をさらに低メチル化=遺伝子発現がONされていることが
確認されたようです。いままでも筋肉は傷をつけることによって修復してさらに強く成長するという超回復の現象が知られてましたが休養によって筋肉が落ちたときもこれらの遺伝子は低メチル化の状態を維持することは新しい発見となりました。これがのちの運動に応答して、より大きな筋肉の成長を促す“スイッチ”となり、筋肥大と関連しており、これはまさに過去の筋肉成長が、エピジェネティクスとして記憶されているといってよいのだと思われます。
次の課題はどの遺伝子がマッスルメモリとして作用するか? ここら辺がわかればけがの回復やより効率の良いトレーニング方法の解明に至りそうです。
これを聞いて思ったのはやはり競技生活を送るうえで「ピークパフォーマンス」という考え方が重要なことです。あるレベルまで達した経験があれば一回通った道が記憶されているわけでそこまでは到達しやすくなるわけです。鉄は熱きうちに打てではないですが勉強も運動もやれる時に思いっきり限界までやっておけということを示唆していると思います。これを聞いて自身の競技生活、勉強生活はどうだったかと思わずにはいられませんが… まだ遅くないと思いますので挑戦を続けたいと思います。



