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未来を読む ―ポピュリズム台頭と格差とAIと―

未来を読む AIと格差は世界を滅ぼすか (PHP新書)
クリエーター情報なし
PHP研究所

AI(人工知能)による経済の地殻変動、グローバル資本主義で広がる格差、自壊を始めた民主主義…。激動を続ける世界は、この先どこへ向かうのか。
本書は、国際ジャーナリスト・大野和基氏が、世界の「知の巨人」8人と対話した論考集です。
なかなかこれだけの論客を集めた本というのはほかにはないのではないかと思いますし内容も(編集されているとはいえ)冗長な所は見られていません。ただインタービューがあるが故に主張に対する具体的な肉付けや考察といった背景はどうしても希薄になっているかもしれません。そういった観点からは各人の主張に興味を持つきっかけを与えてくれる本としても考えてよいのかと思います。

この中で最も注目すべきは、『サピエンス全史』で、認知革命、農業革命、科学革命という3つの革命で人類の歴史を見事に描ききったハラリ氏だと思います。「21世紀になり、民主主義は人類が今直面している難題を処理する能力を失いつつある」ところ、「その主因はテクノロジーの進展」であり、「有権者も政治家も、世界で何が起きているのか正確に把握できなくなる」し、「10年先、20年先、30年先がどうなっているのか、理解している人は誰もいない」という。「政治家はもはや将来のビジョンを提示できないし、物事の趨勢をコントロールして導くことができない」のであって、「政治家も有権者も置き去りにしたまま、テクノロジーだけが劇的に変化を遂げ、人々の生活や国政をも変えているのが現状」だといいます。チュニジアの革命が何で起こっているか世論がどういうところで形成されているか、まさにカオスの世界とも言うことが出来るのではと思います。AI普及する中では「大量の役立たず階級」が発生するのではとの予測。生き残るためには変わることを恐れない精神、能力が必要であり「狩猟民族」のような嗅覚が必要との指摘です。
その他AIに関してはボストロム氏がいわゆる汎用人工知能による社会的な変化の可能性と人間の生活に寄与するような制御の方法について議論されていますし、コーエン氏は究極的に効率を上げるのであれば人間はデジタル的にAIに制御されて生産性を上げることが重要なのではないかと主張しています。いわゆる「ブレードランナー」の世界。むしろ協力体制を築くことが重要という考えです。経済成長が進むにつれて幸福感というのは薄れてきているようにも見えますがさらにAIによって労働が集約化された結果、さらに労働に対する考え方も変わってくるようにも感じます。ボストロム氏はこういった幸福感を得る方法について「一家の大黒柱になることや社会に貢献することで自尊心を得る今の人間の志向を、子どもが小さなことで喜びを得ることを奨励するような、娯楽文化を深める方向に変えていくのです」というような指摘をしていますがここら辺がうまくいくのかというのが気になるところです。

日本では人口減少に伴い悲壮感漂っていますがあまりこの本で取り上げられた人たちに関しては否定的にはとらえて無いようでむしろ未来を先に経験するのであるからモデルになれば良いという考えの様でした。そもそも上記のようにテクノロジーの進化に対して政治や社会制度が追い付いていないところもあるので荒療治ながら自らが変革していくしかないのでしょう。そもそもは多くの予測はありますがテクノロジーそのものの進展を抑えられることが無いということを考えれば関わり方と人間の幸福の追求という方向性さえ一致させることが出来れば大きな問題は起こらないようにも思います。自分としても正直、想像できない世界ではありますが変化に対して変わる音を恐れずついていく姿勢というのは忘れないようにしたいと思います。

各章の主役と概要
Chapter1
「資源を巡り、文明の崩壊が起きる」ジャレド・ダイアモンド
日本は人口減少を喜ぶべき/格差がもたらす三つの新たな脅威とは/「グローバルな崩壊」の淵で

Chapter2
「近い将来、役立たず階級が大量発生する」ユヴァル・ノア・ハラリ
テクノロジーの進展によって民主主義は凋落する/物質経済が終わり、戦争の合理性も消えた/ベーシックインカムがはらむ三つの大問題

Chapter3
「人生100年時代、生き方は三つのステージからマルチステージへ」リンダ・グラットン
変化への対応力で格差が生じる/今の60歳は昔の40歳と同じ/企業と社員は「大人と大人の関係」に移行する

Chapter4
「AI万能時代が訪れ、働き方は根本的に変革する」ニック・ボストロム
人類滅亡リスクのシナリオ/遺伝子改変で「質の高い」人間が造られる未来/AIの安全性を確保する仕組みとは

Chapter5
「テクノロジーは中流階級を豊かにしない」ダニエル・コーエン
一生懸命働きさえすれば報われるという考えは幻想だった/ポスト工業化社会では、人間は半分情報になり、操作される存在に

Chapter6
「北朝鮮は核開発をあきらめない」ウィリアム・J・ペリー
北朝鮮の非核化は経済支援を引き出すポーズ/偶発核戦争は起こり得る/「金正恩は最も成功しているCEOだ」

Chapter7
「民主主義を揺るがすホワイト・ワーキング・クラスという人々」ジョーン・C・ウィリアムズ
アメリカンドリームはすでに神話と化した/分極化するアメリカ/社会的階級が民主主義を変える―今や世界が気づき始めた

Chapter8
「アメリカは分極化の波にさらされる」ネル・アーヴィン・ペインター
「白人至上主義者」とは何者か/トランプ大統領は「アメリカを再び白くする」

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仕事は半導体デバイス開発。 趣味としているEnduranceスポーツと 日常の出来事を綴ります。

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