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学力の経済学


いよいよ町も紅葉真っ盛り。

「学力」の経済学
クリエーター情報なし
ディスカヴァー・トゥエンティワン

 教育を統計的なエビデンスで語ることを問題提起した本
 教育の効果を測るというのはなかなか難しいものだと思います。子供が成長過程にある以上、不可逆な過程にあるわけで色々実験を繰り返そうにも全く同じ状態を形成するというのは難しいものだと思いますし、何より子供の成長というのは大人よりも密接に経済的、地理的、社会的な家庭環境にも大きく左右されるものだと思いますし。
 いわゆる教育学者と言われているような人たちはどちらかというと今までの経験を通じて指導法を決めていくというところが少なからずあると思います。
そういった中で語られる一般論というのは根拠となるデータが不足している点が少なからずあるというのがこの本の大きな指摘のポイントです。
一般論としては正しいと考えられている
・ご褒美で釣っては「いけない」
・ほめ育てはしたほうが「よい」
・ゲームをすると「暴力的になる」
といった常識が以外にも正しくないのではない可能性がある(条件付きですが…)というわけです。

ご褒美に関してはアウトプット=結果に向けてニンジンをぶら下げるのではなく、
インプットに対してニンジンをぶら下げるのは効果があることは実証されているそうです。最終到達点ではなくその手段に対してということの様子。
つまりはテストで良い点を取ったら…ではなく宿題をやる、本を読むといったインプットの方がよさそうとのこと。
こういった外的なインセンティブは内的なインセンティブを失うとの懸念もあるようですが筆者の紹介する研究結果では教育現場ではそういったことは無いとのこと。

褒め育てに関しては「能力」を褒め育てて自尊心を育てるというのは逆効果のようです。ナルシストになってしまうということでしょう。
むしろ褒めるべきは具体的な「成果」とのこと。

ゲームに関しては1日1時間程度であれば影響は低いとのこと。

その他、最も費用対効果の大きいのは幼児教育だった。という事実もあり。
幼児教育で磨かれるのは「非認知能力」といわれる自己認識、意欲、自制心、創造力といった非常にベーシックなスキルのことで
こういった能力が将来的な収入や社会的地位に非常に相関が高いことがわかっている様子。
確かに勉強が出来ても仕事が出来るわけではないというのは多くの人が認識している事実です。

さらには少人数学級の正当性、学力テストの背景にあるものなどの話もあり。
またアメリカが進んでいると思わされたのは「教員の質」を図る仕組みでした。
担当した子供がどれだけ成績が伸びたかというような「付加価値」が公開されている状態になっているとのこと。
これは学力だけでの側面なので一長一短かと思うのですが将来的なトレースの結果、社会的な成功と相関があることが確認されているようです。

まあ経済学自体も学問的に実社会を正確に言い当てられているわけではないので教育に関する統計的な実験も絶対的に正しいのかというと
まだ難しいところだとは個人的に感じます。ただ統計的なエビデンスというものが教育の世界で完全に活用されず、数字といえば学力テストでの競争といった
違う方向に進んでしまっていることは懸念もあり、

考えてみれば技術者の世界でさえデータがあっても統計的な有意差をきちんと見ずになんとなくこっちの方が正しいみたいな判断が下されることが
あったりするわけでデータが十分にそろえることが難しい教育の現場では統計的に正しい判断というのはさらに難しいことなのでしょう。
であるからこそこういった研究結果というのは知っておくべきことなのだと思います。

目次は以下の通り。
第1章 他人の〝成功体験〞はわが子にも活かせるのか?
    - データは個人の経験に勝る
第2章 子どもを〝ご褒美〞で釣ってはいけないのか?
    - 科学的根拠に基づく子育て
第3章 〝勉強〞は本当にそんなに大切なのか?
    - 人生の成功に重要な非認知能力
第4章 〝少人数学級〞には効果があるのか?
    - エビデンスなき日本の教育政策
第5章 〝いい先生〞とはどんな先生なのか?
    - 日本の教育に欠けている教員の「質」という概念

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仕事は半導体デバイス開発。 趣味としているEnduranceスポーツと 日常の出来事を綴ります。

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